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都市郊外ではじめる年収500万円からの不動産投資

第一章
オリンピック開催、海外投資家の積極参入・・・
加熱する「不動産投資市場」の現実

不動産市況を分析してみよう

 
  東京オリンピック・パラリンピック開催が決定して、不動産市場はにわかに湧きたっています。再開発を受けて首都圏、特に開催地周辺ではマンション建設ラッシュが続き、不動産価格も上昇の一途をたどっています。ニュースではこうした状況を取り上げ、「不動産市場好況」を盛んにうたっています。
 しかしこうした「活況」は、あくまで首都圏の一部に限った話であり、オリンピック・パラリンピック開催後はどうなるかわからないと懸念する声も根強くあります。くわえて、少子高齢化が進むなかでは、建設ラッシュによって住宅の「供給過剰」の状態をますます悪化させるとの見方もあります。
 
不動産投資で成功するためには、まずは不動産市況の実態を、長期的な視点でしっかり見ることから始めなければなりません。
 

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~ 不況?好況? 不動産市場の現実 ~

  不動産投資を始めるにあたって第一に着目すべきは、人口構造の変化です。日本の人口は、ゆるやかに、かつ確実に減少しています。国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、2010年の1億2806万人をピークに、すでに減少期に入っています。
 
同研究所の推計によると、将来の人口は2048年には1億人を割り、2060年には8674万人になります。2030年以降、日本の人口は毎年100万人ずつ減っていくことになるのです。
 
このように総人口が減少していく日本社会で、世帯数はどのように変化しているのでしょうか。国勢調査によると、2000年は4678万2000世帯、2005年は4906万3000世帯、2010年は5184万2000世帯と、この10年ほどは増加しています。
 
しかし、今後は総人口が減り続けるわけですから、世帯数についても大きな増加は望めません。むしろ、少子化がこのまま続けば、世帯数も減少していくと考えるのが自然です。
 
人口と世帯数が減少していく状況のなかで住宅を建設し続ければ、需給のミスマッチが起こり、「供給過剰」となっていくのも当然です。現に住宅産業全体を見渡せば、需要より供給のほうが多いという難しい現状が続いています。
 
住宅産業のなかにあって中心的な存在である不動産業も、厳しさは例外ではなく、これまでと同じような考え方で建てた家を、これまでと同じような考え方で流通させていたのでは、やがて立ちゆかなくなってしまいます。そう考えると、住宅産業、業界規模としては30兆円産業なのですが、成長率はマイナスになっています。
 
懸念材料はほかにもあります。例えば、近年はアベノミクス効果による円安傾向から海外投資家が対日不動産投資を積極化させ、キャピタルゲイン狙いで収益物件を買い漁っています。それらが東京オリンピック・パラリンピックの少し前に一気に売りに出される恐れがあるのです。
 
場合によってはオリンピック・パラリンピック開催を前にして、不動産価格が急落することも考えられます。また、既存の賃貸ビルでは空室が増えているという事実もあります。「好況」がうたわれているとはいえ、依然として厳しい状態に置かれた物件はたくさんあるのです。
 
このように聞くと、不動産業界の先行きは真っ暗なように感じられるかもしれません。しかし不動産業が扱う「家」という商品は、所有するにせよ賃借するにせよ、人々の生活になくてはならないものです。
  
それは景気動向に左右されるものではありません。とこかに必ず埋まっている住宅需要を掘り起こし、どのような物件が求めれれているのかをしっかり見極めることが、不動産投資を成功に導くポイントとなるのです。
 

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~ まず、市場ごとの好不況をきちんと見直す ~

 
不動産業が好況であるか不況であるかは、関連する業過の好不況にも影響されます。最も大きな影響を与える業界が金融業界です。
  
不動産業界は、「家を買いたい」と考える個人のニーズに対応します。不動産業界が扱うのは「家」や「土地」です。手持ちの現金(自己資金)だけでは足りない場合は、銀行からかい離れることとなります。金融業界の景況が厳しければ、融資の審査も厳しくなり、なかなか審査が通らず融資額の減額を通知されます。場合によっては家の購入をあきらめることになります。
 
金融業界の不況が続けば、市場には買い手がつかない家が増え、家の供給が需要を上回ることにもつながります。結果として「供給過剰」に陥り、不動産業界も不況となってしまいます。
 
また、物価が下がり続けるデフレの状況は、当然ながら土地の値段、家屋の値段といった不動産価格にも影響を与えます。最近はアベノミクスの影響でインフレ傾向になりつつありますが、その前20年ほどはデフレが続いていました。不動産業者の立場からすると、首都圏ではかつて1億円だった家が5000万円ほどになり、郊外でも4000万円していたマンションが2000万円になるなど、「半値になってもまだ売れない」と嘆くような状況が続いていました。
  
当然この状況は企業収益にも大きな影響を与え、利益が出ずに「不況ここに極まる」という印象が強くありました。
このような状況が続いた不動産業界の景況は、現在でも厳しいものがあります。しかし、その中身をつぶさに見ていくと、そうともいい切れない部分がいくつかあるのです。
 
例えば賃貸市場です。その動向・市場の変化を24~25ページにまとめました。たしかに家賃相場は下落傾向にあり、賃貸不動産業にも厳しさはあります。しかし、売買で家の値段が半値になると同様に、家賃が半値になっているわけではありません。くわえて、賃貸住宅の空室率がにわかに上昇しているわけでもありません。
 
少し古いデータですが、2010年の全国賃貸住宅新聞社の調査によると、賃貸住宅の空室率の平均は23.07%です。都道府県別に見ると大きな開きがあり、最も空室率が高いのは福井県で44.24%、低いのは沖縄県で13.18%となっています。
  
また、総務省の住宅・土地統計調査によると、賃貸住宅の空室率は調査データ公開開始の1978年の11.0%から徐々に増えていますが、2008年段階で18.8%となっています。(5年に1回調査)。すなわち、空室率は増えていても、入居率が50%になるといった状況はなく、おおむね80%前後にとどまっているのです。
  
当然のことですが、人が「家」というものに「住む」という生活スタイルは景気動向によって変わるものではありません。不動産の売買は厳しいとしても、賃貸需要までもが急激に落ち込むわけではないのです。
 
賃貸不動産業の動向を全国的な視点で見ると、以下の二つの状況が目につきます。
 
  ・戦後、さらにその後の高度成長期を経る過程で古い物件が増え、建て替え需要に対応できる物件と、できない物件への二分化が進んだ
  ・ライフスタイルの変化のなかで、新しいニーズを取り込んでいくことができる物件と、そうではない物件への二分化が進んだ
 
このように、不動産売買市場は総じていえばかなり厳しい状況にありますが、不動産賃貸市場は不況とは一概にはいえないのです。
  
すなわち、不動産自体の価値は下落していても、物件を賃貸市場に出すことで収益を上げ、高い利回りを実現することは十分可能なのです。これが、「不動産投資市場」です。
 
その不動産投資市場は、厳しいといわれる不動産業界のなかにあって、むしろ投資市場としては長期に安定的な収益が確保でき、その収益性が確実になればなるほど注目を集め、市況としては活性化しているのです。
 

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~ 不動産投資はデフレにも強いが、インフレにも強い ~

不動産投資は、デフレ期にも堅調、かつインフレ期にも底堅い一面があります。その仕組みを詳しく見てみましょう。
  
デフレとは、物の価値がお金の価値よりも下がり、物価が下落し続ける状態です。消費者から見れば、物の値段が下がれば買いやすくなるので喜ばしいことのように思えます。しかし経済全体で見れば、デフレが続くと企業収益が悪化し、給料もさがるので、経済成長が鈍化し、尻すぼみになってしまいます。
  
それではデフレは不動産投資の対象である物件にどのような影響をもたらすのでしょうか。
  
簡単にいえば、他の物の値段と同様に物件の値段も下がり、買いやすくなります。すなわち投資しやすくなるのです。ただし、賃貸市場に物件を出した場合には、家賃はデフレで物価が下落するほどに大きくは下落しません。管理会社などと協力してメンテナンスをしっかり行えば、デフレにも十分対抗できます。
  
一方インフレとは、お金の価値より物の価値が上がり、物価が上昇していく状況です。不動産の物件の値段も上がりますが、購入したあとは資産価値も上がります。
  
さらに、賃貸市場に出したときの家賃も上昇傾向にあるので、確実な収益性が確保できます。
  
デフレ状況が長く続いたあとにインフレになったとしても、人口が減少を続けている以上、「自分が住む」ための家の数はなかなか増えません。値段が上がり、住む家を買えない状況になるのですから、売買市場としては厳しい状況が続きます。
  
しかし、賃貸による収益性がある不動産投資市場は、こうした状況を受けて、なおさら注目されるでしょう。
  
経済は、長い目で見ればインフレとデフレを繰り返すものです。その周期より長い視点で続けていく必要がある不動産投資は、このようなインフレとデフレの中期に一喜一憂することはあっても、長期的に収益を確保していくことが可能なのです。 
 

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~ 大手のCMと地場の業者の実態はずいぶん違う ~

 2013年には所得税の税率が改正され(2015年に施行)、相続税の制度内容も変わりました。2014年には消費税が増税され、それぞれが不動産需要にどのような影響を与えるかについて、大きな議論を呼びました。
 
 しかし、税制は毎年改正されています。その施行時期は先になるケースもあり、その動向が読めないため、消費者や企業への影響も3年先、5年先にやってくることもあります。このような大きな経済的トピックが不動産市場にどのような影響をもたらすのかは即断できないのです。しかしそのかなでも、「古いオフィスビルをまとめて建て替えて大型複合ビルにしたところ、入居率が上昇、一部は家賃も上昇に転じている」といった報道に、確実に回復の兆しが感じられます。
 
 そのような状況を踏まえて、大手不動産業者の動向と地場の不動産業者の動向を少し見比べてみましょう。
 
 大手不動産業者は近年、都心の大規模開発のマンションにウェートを大きくかけています。東京であれば、首都圏でも中心地と呼べる地域や、東京オリンピック・パラリンピックの開催で再開発が進む湾岸エリアです。金額的にはワンルームマンションで6000万~8000万円クラスが多く、CMや広告も豪華です。厳しい家計をやりくりしている一般市民にはとても手を出しにくいような印象を受けます。
 
 はたして、このような高級マンションが現実に売れているのでしょうか?エリアによって、また施工業者や販売業者の違いなどによって販売状況に差はあるものの、売れている物件はたしかにあります。
 
 実際に購入するのはお金を持っている一部の富裕層に限られてしまう面もあるとはいえ、この背景には「住み替え需要」が大きく営業しています。高齢化が進み、リタイア後のセカンドライフをいかに充実させるかについて関心が高まっています。資産組み替えの意味も含め、それまで住んでいた家を売却し、一戸建てからマンションに住み替えるのです。いわば、住居のスリム化です。
 
  現に、このようなマンションを購入する人のうち、年齢50代以上の割合が徐々に増え、現在は全体の3割を占めるという調査結果もあります。大規模マンションの開発が盛んになったのには、このような要因があるのです。

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~ 必要とされる物件像は、経済や社会の変化に影響される ~

 
一方、各地域で営業展開している地場の不動産業者はどうでしょうか。その前に、まずは不動産業界の仕組みをおさらいしておきましょう。
 
  物件は、一度販売されて売りに出されれば、中古不動産として扱われます。新築物件はそれを建てた業者か系列の不動産業者しか扱えませんが、中古不動産はどの業者でも扱えるようになります。
 
  しかし実際には、全国各地の地場の不動産業者が首都圏の中古高級マンションを扱うことはほとんどなく、地場の物件のみを扱うケースがほとんどです。すなわち、大手と地場の不動産業者では、使う対象不動産が異なり、顧客も戦略も違うのです。
 
  大手の不動産業者では、「買い(=顧客が購入する)」において利益が成り立つ部分が大きく、購入してくれるお客を必死になって探すことになります。一方、地場の中小規模の不動産業者の場合は、地元の地主をメインの顧客とすれば、ある程度は楽に商売できる面があります。というのも、彼らは売買のうちの買い(=顧客が購入する)で仲介手数料を受け取るというよりも、売り(=顧客が売却する)で仲介手数料を取るというシステムで商売が十分に成り立つからです。
 
  また、首都圏近郊の市場動向といくつかの業者の動向を見ると、顧客層が様変わりしているようです。賃貸部門では、かつてはワンルーム=学生、2DK=新婚夫婦、3DK=転勤世帯といった家族構成による“すみ分け”があったものですが、最近はこの形態が変わってきています。
 
  例えば、学生でも仕送りの十分な人は広めのワンルームや1LDKクラスの部屋を求める傾向があり、一方で、離婚して子供を抱えて賃貸を探すといった例も、最近の3組に1組は離婚するという世相を反映して増加しているのです。
 
  地域にもよりますが、大手企業の工場がある町では、外国人が賃貸住宅を探す例もあります。外国人が賃貸住宅を探すとなれば、住まい方にもお国柄が出ます。業者側としてはその需要を取り込むには「いまのままの間取りの住宅ばかりを扱っていてよいのか」という“戦略転換”を求められることもあるのです。
 
  このように、賃貸需要は時代やエリアによって異なります。それを見極めたうえで、ニーズに合った物件を選ぶことが、不動産投資成功のポイントとなります。